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神楽家に到着した一行のうち、健太とホルスは絶句させられた。
「デッカ! まさか金持ち!?」
「うん……まあ……。少しは、ね」
「少しだと……? 私が人間界に降りてから随分経つが、こんなに大きな屋敷は初めて見るぞ!?」
「この辺ではまあ、ここぐらいだろうけど……」
「私達も初めて見た時は驚きました」
「そうね。使用人がいたり……」
「や、安月給なのよ!」
天子と魔子だけは、明日香自身が家に招いた事がある。
あまり知られたくない秘密だが、二人が色々話してくれるうち、自ら進んで知ってもらいたいと思うようになった。
明日香には幼い頃、金持ちのお嬢様という理由で、周りが普通に接してくれなくなった嫌な思い出がある。
時にそれは明日香を傷つけるような事態にも及び、それから誰にもバレないように努力してきた。
自分はどこにでもいる普通の一般人だと、偽りの自分を演じてきたのだ。
「とにかく、確かに私は金持ちの娘だけど、みんなが想像してるような性格はしてないからね。今までの自分と変わらない……あまり」
「あまり?」
健太が疑問を口にした時だった。
「明日香お嬢様、お帰りなさいませ」
白髪と白髭が似合う初老の男が歩いてきた。
執事服に身を包み、手にはステッキを持ち、明日香に頭を下げる。
「ああ……えっと、ただいま……」
「これはこれは、そちらの少年は御学友の方ですかな? そして……誰でしょうか貴方は? 身の代金目当ての誘拐犯なら容赦しませんが」
「何だこの無礼なジジイは!」
「失礼。私は神楽家の執事長を務めさせて頂いております、山田と申します」
「セバスチャンじゃないん!?」
「当たり前よ! どう見ても日本人でしょうが!」
「しっかし……何や普通やな。山田って……」
「見た目とのギャップは最近の流行りと聞いております」
「誰からよ!?」
ノリ良くボケをかます健太と山田に明日香のツッコミが冴え渡る。
「それより山田。パパとママは……あ、まだ出張中だったわね……。まあいいわ。山田に話があるの」
そして明日香は話し出した。
工藤家にも話した事をそのまま。
「……ふむ。旅行、ですか。では、私共が手配しましょう」
「それはダメ! ……ここにいるホルスが保護者として、私達だけで行きたいのよ」
「それはなりません」
山田は表情を変えずにそう言った。
やはり一筋縄ではいかないようだ。
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