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豪華な装飾が所々で際立つ大広間。
その中央には、美麗な顔立ちをした少女のような少年が立っていた。
華奢な体つきをしているが、その虚ろな瞳が彼の圧倒的な存在感を醸し出している。
「……遅い」
彼の声は少女のように高いが、圧倒的な威圧感が彼を男だと証明しているようだった。
不意に廊下の方から足音が聞こえてくる。
少年がそっちに目を向けると、一人の青年兵士が歩いてきた。
「な、何だ貴様はッ!? この城に何用だッ!?」
兵士が腰の剣に手を掛けた。
少年は全く動じずに口を開く。
「遊びに付き合ってる時間はない」
「な、何だと!?」
「エリー」
「ありゃ、やっぱりバレてたかぁ」
兵士が急に砕けた口調でそう言うと、白目を向いて倒れた。
彼の体から幼い少女が飛び出す。
「久しぶりだね、ロード」
「久しぶり? 僕はそうは思わん」
「こういう時は、とりあえず久しぶりって言うんだよ?」
「それは人間界での話じゃないのか?」
「どうだろうね。適当な事言っただけだしー」
少年ロードと少女エリーの会話は静かな大広間中に響いていた。
「人間界の天魔に会いに行ったらしいな。どうだった?」
「ん、惚れちゃったぁ♪」
「…………」
ロードは額に手を当てて呆れていた。
「あ、妬いてる?」
「それはない」
即答。
「僕が聞きたいのは、天魔の強さだけだ」
「う~ん……悲しいけど、まだまだ弱いかな。天界で言えば、下級兵士レベル」
エリーがそう言うと、ロードは腕を組んだ。
ジッとエリーを見つめてから告げる。
「……それはないな」
「え~どうして~?」
「天魔はあの二人を倒した。もし本当に下級兵士レベルなら、勝てる訳がない」
「あの二人って、最強の部下の事?」
「そう。天魔様も認めた、あの二人だ」
「名前、何だっけ?」
「そんな事は重要ではない。もし天魔が僕達の側に付かなかったら、厄介な事になるだろ」
「おかしいなぁ……あの時はまだそんなに強くなかったのに」
「……成長したんだ。天魔という存在を僕達と同じように考えるな」
「はいはい。わかったわかった。それで、用事って何かな?」
エリーが本題に乗り出すと、ロードは眉を細めた。
大広間に少しの間、静寂が訪れる。
ため息を一つ吐いたロードは話を続けた。
「天魔が天界に侵入した」
「わぁ♪」
エリーの喜びようを見て、また一つため息を吐くロードだった。
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