毎日に違和感

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健太も明日香同様、彼女達の名前を聞く事で全てを思い出した。 そして同時に起こる感情は勇輝への怒り。 「何でアイツ、一人で行ったんや!?」 「ホント、最後まで自分勝手な奴だったわ!」 勇輝に対する不満や愚痴を聞かされる羽目になった小さな二人は、苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。 約三日とも呼べる期間、天子と魔子はその場にいなかったのである。 自分達の世界にいたわけでもないらしい。 「無の空間? 勇輝の力でそこに?」 「うん。多分、天魔様……勇輝は自覚がなかったと思うけど……」 「自覚があったら、天界に行く必要ないしな」 「そこで私達は結構長い期間を過ごしたんですけど、現実の世界ではコンマ一秒も経たないらしくて、驚きましたよ」 無の空間には名の通り何もない。 いや、声はあったが時間の流れや肉体の成長はまるでないのだ。 そんな不思議な世界に飛ばされたという二人は、小さくなって帰って来た理由を話し出した。 初めは死んだと思っていた。 何もないその場所で、ただ自分達がいるだけ。 喋る気も起きずボーっとしていると、 「起きたらどうです?」 二人のものではない、男性の声が聞こえてきたのだ。 「起きるってのはつまりアレだ。腑抜けてる状態から脱せよっつー……って、すぐには無理か?」 もう一人、男性の声が聞こえてきた。 天子と魔子はとりあえず起きる努力をしてみる。 すると、目の前に見覚えのある白ローブと黒ローブの姿があった。 「あっ! さっきの!」 「ウチらを殺した連中!」 だが、男二人は互いに顔を見合わせ笑う。 その身に纏うローブを脱ぎ捨てた。 あの二人に似てはいるが、全くの別人だった。 「私はアリバァ。天界の兵士だった者の一人です」 「俺はラリバァだ! 魔界の兵士の一人だった!」 対象的な二人だった。 何だか自分達に似ていると思ってしまう。 「似ている、ですか。それは嬉しいですね」 「そうだな。俺達の願いが届いたんだよ!」 心を読まれた。 「読んだのではなく、私達と貴女方は同じ存在みたいなものですから、分かるのです」 さも当たり前のように言うアリバァ。 頷いてそれを肯定するラリバァ。 さすがの二人も気持ちが悪いと思った。 関わってはいけない危険人物だと、 「ちょ、ちょっと待って下さい! 誤解です!」 「そうだぜ、おい! だって俺達はよ……」 彼らは『前世』とか言うもんだから、二人は驚いた。
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