毎日に違和感

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昔々――天界に住む天使と、魔界に住む悪魔が、戦争をした。 理由は誰一人として知らなかったが、元々、仲の悪い種族同士だったので、いつかこうなると予想はされていた。 アリバァとラリバァは、その戦争で最後まで生き残った。 一介の兵士である彼らがである。 そこから、三日三晩にも及ぶ戦いが続いた。 実力は互角。 空腹感を感じるのもお互い様。 極限状態の二人を止めたのは、幼い少年だった。 右には黒い翼、左には白い翼を持つ、お伽話級の伝説の生命体――『天魔』。 彼はそう名乗り、二人を認めたと言った。 つまらない戦争で生き残った優秀な二人を、自分の物にしようとした。 だから、その矛先を少年に向けた。 仲間の死を無駄だとか、馬鹿だとか、面白半分で笑う少年が許せなかったのだ。 その後、少年の未知の力により、何もかも消されてしまった。 たくさんの天使や悪魔の死体、そして、アリバァとラリバァの二人も、また。 「私たちが今ここにいる理由は、貴女たちがいるからですかね。この空間は、よく分からないことが多いのですよ」 「えっと……つまり、貴方たちは……その……」 言葉に詰まる天子に、ラリバァは笑って言った。 「そう! もう死んでるんだよな。まあ、前世って言ったから、分かるだろ?」 「ウチらの前世……生まれ変わる前の姿?」 「おうよ」 「なんでそんなのが出てくるの!?」 「知らねーよ。この空間の影響じゃねーか?」 ますます混乱する二人だった。 「全部話しますよ。知ってること、全部」 それから、二人は前世の二人から色々な話を聞かされた。 天子と魔子を殺そうとしたローブ姿の二人が、実はアリバァとラリバァの子孫だったとか。 実際、殺されることはなく、勇輝の力によってこの空間に飛ばされたとか。 生まれ変わったら、友になる約束をしていて、天子と魔子に感謝してるとか。 まあ、色々である。 『無の空間』と呼ぶらしいここには、時間がなかった。 それでも、二人は早くこの空間から抜け出したいと思った。 脱出で考えられた方法は、現代ではもう忘れられてる魔法を覚えること。 天子と魔子からしたら、古代魔法というヤツである。 才能もあったし、時間もあった。 いや、時間はないが、覚える時間はあったという、ちょっと矛盾してるような時間が。 その古代魔法を覚えるのに、どれくらいかかったのかは分からない。 時が過ぎる感覚も、あまりなかったから。
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