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その古代魔法は確かに成功した。
空間と空間を渡ることのできる、現代では誰も使えない魔法である。
しかし、成功したのに元の世界に戻れたのは、二人の魂だけだった。
それだけ強力な力でできた空間なのだ。
魂から妖精のような姿に変化した二人は、あの戦いの荒野から、三日間もかけて戻ってきた。
二人は小さい割にはとても早く飛べる。
魂だけの状態だと、肉体への負担は一切ない。
だが、肉体がないからこそ、やれることも限られている。
「なるほど。じゃあ、早く勇輝を捜し出して何とかしてもらわないとね」
二人は頷いた。
だが、健太は難しい顔をしている。
「それで、どうやって天界に行くねん? わいら飛べへんのに」
二人が抱えて行くというのは、彼女たちの大きさや、そもそも肉体がないから不可能である。
天界への入り口は、飛行機が飛ぶ位置より更に上に行かなければ辿り着くことはできない。
天子と魔子は、そのことについては問題ないと言った。
「私たちに身体があればいいんですよ」
「どういうこと?」
「ウチらが二人と同化して、天使と悪魔の力を与える」
「そんなんして大丈夫なんか? お互い」
「大丈夫です! というか、これしか天界に行く方法がないんです!」
そこまで言われると、さすがに反論することはできなかった。
勇輝に会いたいという気持ちや、天子と魔子の身体を戻したいという気持ち。
二人にとっては、それはもう他人事などでは決してない。
「行ってすぐ帰って来れるなら、いいんだけど……」
明日香は暗い顔をして言った。
両親には何と言えば納得してもらえるのか?
まだ中学生の明日香が、大人もなしで旅行は禁じられている。
「わいは問題ないけどな。修行とか言えば」
健太の家はかなり普通とは言い難い。
家に住む人もやはり変なので、了承を得るのも簡単だろう。
「大人が……大人がいれば、許してくれる可能性も出てくるのに……」
だが万が一、大人を連れ出すことに成功しても、二人が何日もいなくなれば、その人に迷惑がかかる。
よって、今回の件をちゃんと知っていて、信じてくれる都合の良い大人が必要だった。
「……刺客……」
天子がボソッとそんなことを言い出して、場が一瞬だけ固まった。
「え……あ、冗談……」
「それよ!」
明日香は力一杯そう叫んだ。
勇輝たちによって倒された刺客。
彼らが罰を恐れて自分たちの世界に帰ってない可能性は大いにある。
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