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まばゆい程の月がでている夜、街は静寂そのものであった。
その街の一角、立派な外観の館の一部屋に、老人と全身を黒いコートで覆った者がいた。
しかし老人は傷だらけであり、両者は対等な立場であるとは言えないであろう。
「ど、どうか命だけは許してくれ……」
老人はそう懇願するがコートの人間から返事はない。
コートの者は顔を隠しているが、身長から推測して男であろう。
男は手に持っている剣の切っ先を老人に向け、心臓を一突きした。
恐怖に目を見開いたまま、老人は倒れた。
男の澄んだ声が部屋に響いた。
「貴様は生きるに値しない……」
男は音もなくその場から姿を消した。
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