プロローグ

2/2
前へ
/113ページ
次へ
まばゆい程の月がでている夜、街は静寂そのものであった。 その街の一角、立派な外観の館の一部屋に、老人と全身を黒いコートで覆った者がいた。 しかし老人は傷だらけであり、両者は対等な立場であるとは言えないであろう。 「ど、どうか命だけは許してくれ……」 老人はそう懇願するがコートの人間から返事はない。 コートの者は顔を隠しているが、身長から推測して男であろう。 男は手に持っている剣の切っ先を老人に向け、心臓を一突きした。 恐怖に目を見開いたまま、老人は倒れた。 男の澄んだ声が部屋に響いた。 「貴様は生きるに値しない……」 男は音もなくその場から姿を消した。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3071人が本棚に入れています
本棚に追加