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「お、お父さん、とうとうリストラされちゃったのっ!?」
こんな時代だもの、いくらできる人でもリストラされちゃうこと、あるわよねぇ。
「はっはっは、残念だね。ボクが仕事をやめればチョコは楽ができるだろうけど、会社がボクのことを離してくれないさ」
そうでございますか。
わたくし、安心いたしましたわ。
「今日はチョコに大切なお話があってね」
ついに再婚ですか、お父さま!?
「那津くんもあがりたまえ」
あたしの後ろに立っていたナッツさんにそう声をかけていた。
……那津?
疑問に思いつつも、靴を脱いで上がろうとしてふと下に視線を向けると、父の靴の横に見覚えのない妙にきれいな男性用の靴が一足、置かれていた。
ん?
再婚話なら女の人の靴がないとおかしいわよね?
ま、まさかっ!?
お父さま、あっち方面の方だったんですかっ!?
頭の中にはイケナイ想像……というより妄想が繰り広げられた。
え、やだ。
お父さん、せめて女の人にしてっ!!
いつまでも玄関で固まっているから、ナッツさんは心配そうに顔を覗き込んできた。
……顔が近いっ!!!
「ナッツさん!」
「千代子さま、お父さまがお待ちですよ?」
ふんわりと微笑まれ、またもや自分の頬が熱を持ったことが分かった。
だけどこれ、どうしようもできないじゃない?
きれいな顔の男の人にこうやって顔をのぞきこまれて恥ずかしくない女の子なんていないと思うわよ。
ナッツさん、そのあたりをきちんと分かっていてわざとやっている風でもあるし。
これだからいい男は困るわ。
ため息をつき、靴を脱いでリビングへ向かった。
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