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そうしてようやく先ほど父の言った言葉の重大さに気がついた。
婚約者、というのもそれはもう重大事項なんだけど。
「た、橘ってっっっ!!!?」
父の勤務している会社の名前は『橘製菓』。
そんな父が連れてきた「橘圭季」なる人物。
ちょおおおっと、まていっ!
「た、橘ってっ」
さっきから同じことしか聞いてないような気がするけど、それだけ気が動転しているということを分かって!
あたしのあせりなんてまったく気にしていない、父から橘圭季と紹介された男性はあたしの錆色の髪の毛を面白そうに引っ張っている。
「本当にチョコレート色なんだぁ」
あたしはその言葉にムッとする。
「髪の色のこと、言わないでよ!」
あたしは産まれた時から母譲りの錆色の髪──分かりやすく言うとチョコレートのような茶色──で、お菓子の日に産まれたのと髪の色と合わせて『千代子』……愛称がチョコ、になるように名前をつけられたのだ。
あたしにとってチョコ、というあだ名はかわいいし気に入っているんだけど、どうしてもこの髪の色だけはコンプレックスで……。
小さい頃から男の子にこの髪の色についてからかわれていたから余計に嫌なのもある。
そのせいで男の子って苦手なのよね。
「おれはこの髪の色、好きだけどな」
そんなことを言われたことがなくて、びっくりして橘さんを見た。
「おれなんてこんなに黒くてかたい髪で結構困るんだぞ」
そういって橘さんは自分の髪の毛をもしゃもしゃとして見せた。
そうしたら急に立花先生を思い出して、ムッとした。
……なんでここで立花先生が出て来るのよ!?
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