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今日、初対面のはずの男ふたりは仲良くなぜかわが家のキッチンを独占して料理を作っている。
あたしはどうすることもできなくて、部屋に戻って制服を着替えることにした。
ジャケットとスカートを脱いで、楽な恰好に着替える。
制服のブラウスを洗濯かごに持って行き、ついでに洗濯機を回すことにした。
洗濯機に衣類を適当に放り込み、洗剤を投入してスイッチを押す。
洗濯層の中に水がたまっていくさまをぼんやりと見つめていた。
なんだかいきなりとんでもない状況のような気がするんですけど。
水がたまり、ぐるぐると回り始めた洗濯機を見ていたら、ナッツさんがあたしを探していたようだった。
「千代子さま、こちらにいらしたのですか」
洗濯機のふたをして、離れた。
「探さないで済むように首輪でもつけておきましょうか」
丁寧な言葉でとんでもないことを言われ、かなり引いた。
「く、首輪って、あたし、犬じゃないですよっ!」
「茶色いふわふわの髪に甘いにおいをさせてるなんて、子犬みたいなものじゃないですか」
だから男の人って嫌いよおおお!
そうやってあたしの見た目を悪く言うじゃないっ!?
あたしたちの言い合いを聞きつけたのか、橘さんがやってきて止めてくれた。
「那津、チョコをそうやっていじめない」
橘さんがナッツさんの頭をこつん、と叩いた。
「暴力反対!」
「こんなもの、暴力のうちに入らないだろう? それより今言ったこと、チョコに謝れ」
「嫌だ。本当に子犬みたいなんだからな」
ナッツさんはさっきまでの強気そうな雰囲気を一転させて、少し泣きそうな顔をして橘さんを見上げている。
その表情の方がよほど捨てられた子犬のようで、あたしはくすり、と思わず笑ってしまった。
「ほら、ご飯にしよう」
橘さんはナッツさんの頭を掴んでキッチンへ向かった。
あたしはその後ろについて行った。
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