《三話》立花センセ、ファンクラブ!?

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「千代子さま、お食事の時間でございます」  少し遠慮がちな声と手に、目が覚めた。  目を開けると、薄暗くて寝ている間に夜になってしまったことを知った。  それよりも……。  このテノールの声、だれだっけ?  寝ぼけた脳みそで布団の中でまだまどろみながら考える。 「チョコちゃん、起きないの? 襲っちゃうよ」  その言葉と同時に、あたしの上になにかがのしかかってきた。 「!?」  薄暗闇の中、人のシルエットが目の前に浮かびあがり、ものすごくあせった。 「な、なにするのよっ!?」  目の前になぜかナッツさんの整った顔があり、心臓が口から飛びでそうになった。 「なかなか起きないから、襲っちゃおうかなぁ、と」  そうしてナッツさんはあたしの身体の左右に手を置き、その腕で身体を支えた状態で見下ろしていた。 「寝顔もかわいいけど、寝起きのちょっとボーっとした顔もかわいい」  にっこりと微笑まれ、頬が赤くなるのが分かった。 「照れてる。やっぱりからかうと楽しいなぁ」  先ほどのセリフはからかいのために言われたものだと気がつき、ムッとして布団の中からナッツさんの身体をぐい、と押し上げる。 「ナッツさん! 起きますから布団から降りてくださいっ!」  ナッツさんは素直に布団から降りてくれた。  こういうところは意外に素直なのよね、この人。  そんなことを考えながら身体を起こし、ベッドから降りる。 「夕ご飯、出来てますよ。冷めないうちに食べましょう」  チョコレートがとろけそうな笑みを向けられた。  だいぶ耐性がついてきたようで、これくらいなら頬が赤くなる、ということはなくなってきた。  なんだかこの人、二重どころか三重人格っぽいのよねぇ。  短い付き合いだけどなんとなくそれは分かってきた。
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