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聞き返そうとした時、圭季さんは赤墨色の瞳を細めてあたしを見ながら、
「改めて自己紹介をしようか?」
と聞かれた。
圭季さんのことは名前しか知らなかったので、素直にこくり、とうなずいた。
「名前は橘圭季。雅史さんが勤めている『橘製菓』の世間的に言えば御曹司になる」
そこまで言って、圭季さんは大きくため息をつく。
今の圭季さんの言葉に少し疑問を抱く。
世間的には?
実際は違うの?
「……まあ、違わないか」
自分の言葉に苦笑しているようだった。
「あの、ところで……」
聞いていいのかどうか悩んだけど、ここで聞いておかないとと思い、意を決して口を開く。
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