《三話》立花センセ、ファンクラブ!?

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「なんであたしだったんですか……?」  あたしは早生まれということもあり、十七になったばかり。  結婚可能年齢ではあるけど、それは法律上では可能なだけで、結婚したいなんて思ってもいない。  ましてや、どちらかというと男の子が苦手、なのである。  圭季さんやナッツさんを見てかっこいいと思うし確かに胸がドキドキとはするけど、それは慣れていないだけでそこに『恋愛感情』なるものがあるか、と聞かれると、たぶんない。  一方の圭季さんは、明らかにあたしより年上。  しかも橘製菓の跡取りっぽい。  そんな人があたしの婚約者、だなんてナッツさんが執事、というのと同じくらい……ううん、それ以上、なんの冗談かと聞きたくなる。  圭季さんは『あたしだから』と言っていた。  圭季さんともなれば、あたしなんかではなくてもっとずっとすごい人を選び放題のはずなのに。 「そうだね……。おれはチョコの作るお菓子に惚れたんだよ」  圭季さんの言葉に、どきり、と心臓が高鳴った。  だけど。  あたし自身ではなくて、あたしが作ったお菓子に惚れた、のか。  というがっかり感もあった。  『あたしだから』というから……圭季さんの中にあたしに対する感情がなにかあったのか、と期待してしまっていたから。  あたしの中でドキドキとした気持ちとずきずきとした痛みが同居していた。  そう、よね。  こんな恋愛の「れ」の字も知らないような小娘に圭季さんが惚れるだとか、ありえないわよね。  あたしはなにを期待していたんだろう。 「あはは。……え? お菓子?」  圭季さんはいつ、あたしが作ったお菓子を口にしたんだろう?  父が会社にお菓子を持っていく、ということは有り得ないから……。 「あたしのお菓子、いつ食べたんですか?」  あたしの疑問に圭季さんの表情が明らかに変わった。 「え、あ。うん」  圭季さんは困ったように頭をポリポリとかき、目線を宙に漂わせている。  ……言えないようなこと、なの?
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