《三話》立花センセ、ファンクラブ!?

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「あーえと。いや、実はまだ食べたことないんだけど、雅史さんの話を聞いているとお菓子作りの姿勢というか……」  しどろもどろ、という感じだったけど、その説明がしっくりきたのであたしはそれ以上、追求することはやめておいた。  それよりもお父さま。  会社で娘の話をしないでくださいっ!  先ほどあんなに『自分ではなくてあたしの作ったお菓子に惚れたのか』とがっかりしていたのに、圭季さんの言葉にすっかり舞い上がってしまったあたし。  お菓子が大好きな父に育てられたあたしは、お菓子作りに関してはかなりのこだわりをもって作っている。  無塩バターで作らないといけないところを普通のバターで作ったり、ということはたまーにするけど、最近、塩スイーツが流行りだからいいのよ! と思って作ったら、思ったよりも美味しくできた。  『けがの功名』だったのよっ! 「あ……」  あたしはふと、思い出してしまった。  今日、クッキーを焼こうと思っていたのに!  壁にかかっている時計を見ると、すでに二十二時を過ぎていた。  今から作るには遅すぎる。  諦めることにした。 「二十二時過ぎてますけど、おふたりとも早く帰ってくださいね」  圭季さんとナッツさんは顔を見合わせる。  そして、圭季さんはおもむろに口を開いた。 「今日からおれたちの家、ここになったんだ」  はい?
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