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普段なら帰りが遅い、と言ってもこの時間には帰ってきていることが多い父がいまだに帰ってこないのは、あたしに怒られることが分かっていてどこかに行っているな?
文句を言いたい人が目の前にいないことに腹が立った。
本人たちを無視して勝手に決めるなー!
「おれもこの話を聞いた時、断ろうと思ったんだ。チョコはまだ高校生で、そんな口約束で将来を決めてしまうのは申し訳なくて」
この人、いい人かもしれない。
きちんとあたしのことを考えてくれていることがうれしかった。
「だけど、雅史さんの熱い娘の話を聞いていて、少し興味がわいてきたんだ」
どんな話をしたんだ、お父さま。
「父からは一年、と言われたけど……。とりあえずお試し期間で一週間。おれと暮らして今後どうするか考えてもらおうと思って、話を受けてみた」
一週間なら、いいかな?
「いきなり男のおれとひとつ屋根の下、だと不安だろうから。那津も一緒にと思ってね」
だけどその那津さんが一番危険、ということをご存知でしょうか、圭季さん。
リムジンの中でべったりと密着されたこととお昼寝あけにのしかかられたことを思い出し、自分の顔が赤くなったことに気がついた。
頬の赤みをごまかすために、今まで圭季さんを見ていた顔を伏せた。
「あ、チョコが嫌というならおれたち、今からでも帰るけど」
あたしが顔を伏せたことで嫌がっていると判断したらしい圭季さんはあわててソファから立ち上がる。
誤解を与えてしまったことに気がつき、顔をあげて圭季さんを再度見た。
「ち、違うんですっ! あまりのことに驚いて……」
ふとナッツさんを見ると、今までずっと圭季さんの後ろに立って黙って聞いていたと思ったらいきなりあたしの目の前に現れ、
「それでは千代子さま、続きはベッドの中で」
というなり、圭季さんの向かいに座っていた腕を引っ張ってソファから立ち上がらせた。
続きはベッドの中で!?
意味が分かりません!
「こら、那津。やめなさい」
あたしの執事のイメージはかなり偏見が含まれているのは重々承知の上だけど、ナッツさんのあたしに対する態度は明らかに執事の態度、ではないよね?
かなりからかわれているような気がする。
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