《三話》立花センセ、ファンクラブ!?

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「そういうわけでチョコ。とりあえず一週間。嫌なら途中でやめるから、すぐに言ってくれる?」  圭季さんは赤墨色の瞳に少し不安の色を乗せながら、にっこり微笑んでくれる。  父以外の男の人とひとつ屋根の下、という初めての状況に戸惑ったけど、そこまで嫌ではないし……嫌ならすぐにやめてくれるみたいだし。 「はい……」  小さくそれだけ返事をした。  その返事に圭季さんはほっとしたのか、大きな瞳を少し細め、あたしの錆色の髪を大きな手でくしゃくしゃ、としてからリビングを出て、父の部屋のある方面へと行った。  ナッツさんも圭季さんの後に続いた。  わが家の作りは少し変わっているらしく、玄関を入ると少し廊下があり、その扉を開くとリビングになっている。  対面型のキッチンとダイニングがリビングの横にあり、そこを中心として玄関入って右側に向かうとあたしの部屋と風呂、トイレがある。  左側は父の部屋とゲストルームとサービスルームという名の物置がある。  圭季さんとナッツさんは父の部屋の前のゲストルームに寝泊まりするようだ。  あたしとは反対側なのを知り、ほっとした。  リビングとダイニングの電気を切り、自室に戻った。  先ほどまでお昼寝していたにもかかわらず、圭季さんの話は予想以上に疲れさせてくれたらしく、布団にもぐるとそのまま夢の住人と化した。
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