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「圭季くんは和明の教育方針のもと、なんでもこなせるみたいだし、那津くんも素晴らしい執事ではないか。いい男に囲まれて生活するなんて、人生のうちでそうそうないぞ? 楽しまないと損だと思うんだけどな」
あまりにも前向きな意見に、開いた口がふさがらなかった。
父は美味しそうにほうじ茶をすすっている。
……お母さま、前から疑問に思っていたのですが。
この父のどこに惚れたんですか?
この超前向きな天然ボケに惹かれたんですかっ!?
こんな人が橘製菓の部長なのか……と思ったら、橘製菓の将来がものすごく心配になった。
それはひいては圭季さんの将来への不安、となり……。
あたし、そんな人と婚約って……。
ものすごく不安だっ!
やっぱり、あたしなんて世間知らずの女子高生が婚約者、というのはお互いにとって不幸なような気がしてきた。
こんなすっとボケた父を雇っているような会社なんだから、もっとしっかりした人を奥さんにもらった方が将来安泰するってものよね。
圭季さんの料理は美味しいしいい男の保養ができなくなるのは確かに残念だけど、これは早々にお断りした方が圭季さんの将来のためになるわよね。
あたしはそう結論を出した。
そう考えたら急激に喉の渇きを思い出し、恐る恐る熱々のほうじ茶に口をつけた。
鼻に抜ける香ばしい匂いと舌に残る少し甘みのある味。
美味しい。
昨日の疲れた状況ではただ流されるままに同意した部分もあったけど、今は一晩寝てすっきりした一番クリアな頭で考えたことだ。
間違いはない!
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