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「チョコちゃん、この人たちとお友だち?」
楓さま、と呼ばれた人は当たり前のようにあたしの真横に立ち、面白そうな表情でファンクラブ会員さまたちを眺めている。
いや、それより。
今、この人あたしのことを「チョコちゃん」と呼んだ?
あたし、この人と初対面だと思うのですが?
「どちらさまですか……?」
あたしの疑問に楓さまは目を見開いて、次の瞬間、はじけたように笑い始めた。
「チョコちゃん、それ、なんて冗談!?」
お腹を抱えて笑っている楓さまにファンクラブ会員さまたちもびっくりしてことの成り行きを見守っている。
ムッとしてもう一度問いただそうとした時、ふとさわやかな風が楓さまの方からあたしの方へと駆け抜けた。
その時、かいだことのある香水の匂いがあたしの鼻腔をくすぐった。
あ……れ?
この香水って……?
ナッツさんと一緒のにおい?
「千代子さま、まさか……」
楓さまはまだ笑ったままだったけど、あたしの耳元でそうぼそり、と呟く。
その声にようやくパズルのピースがぱちり、とはまるような感覚を覚えた。
「え……。うそ」
思わず楓さま……否、ナッツさんに指さしてしまった。
「え、え、えええっ!?」
「雅史さんから聞いてたけど、ほんっとチョコちゃんって恐ろしいほど天然だねっ!」
今まで見たことのない人懐っこい表情でナッツさんはあたしに笑いかけた。
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