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そして、教室について自分の席にたどり着く前にあたしは床に崩れ落ちた。
「那津……なんであなたがあたしの席にいるの?」
先ほど校門前で見た那津が当たり前のようにあたしの席に座っていた。
「千代子さま、おはようございます」
にっこり笑って椅子から立ち上がり、座るように促す。
周りはあたしと那津のやり取りに痛いほどの視線を送ってくる。
うぅ、注目を浴びるのは不本意すぎる!
「那津! あなたは一年生で教室はここではないでしょっ!?」
あたしの言葉を聞いているのかいないのか知らないけど、那津は鉄黒色の瞳に笑みを乗せ、微笑む。
「わたくしは千代子さまの執事。常にご一緒するのがつとめ。先生の許可なら取ってありますのでご心配なく」
那津は優雅にお辞儀をして、無理やり椅子に座らせ、隣の席に座る。
そういう問題じゃないわっ!
それよりも先生!
そんなわがまま許されていいのですかっ!?
しかも!
今座った隣の席、昨日まで別の人が座っていたわよね!?
どうなってるの?
あたしは言いたいことがたくさんあって、だけどうまく言葉にできなくて空気を求めて水面に上がってきている魚のように口をぱくぱくとさせることしかできなかった。
ようやく落ち着いて那津に文句を言おうとしたら。
……無情にも始業のベルが鳴り始めてしまった。
クラスメイトたちはあたしと那津の動向を気にしつつも席について前を向く。
しばらくして、苦手な数学教師が教室に入ってきて、授業が始まった。
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