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AM:8:03
登校
「桃也さぁぁぁぁん!!!」
「朝っぱらからうるさい!!!」
華桜学園の朝はこのやりとりから始まる。
寮を出て校門を通り、数多くの学生が学園に登校している中、この2人のやり取りが当たり前になっている。
『氷の女王様』こと佐倉 桃也
『ヘタレの天才児』椿 蕉侍
「そんな連れない事言わないで下さいよぉ!けど!だから好きだぁぁ!!!」
「ウザイッ!!!」
デレッとした顔をしながら佐倉に飛び掛かる椿に対し、何処から取り出したのか『100t』の文字を記したハンマーで殴り飛ばす佐倉。
この2人は学園でも有名なカップルで、別名『女王様と犬』。
犬の様にひっつきまっつきする椿に、それを容赦無く一蹴(罰)する佐倉。
その為、その様な名前が付いた。
学園の中で、この2人が仲良くしている所を見た事が無い程。
が、それでもカップルの様だ。
「し…しどい…こんなに桃也さんの事が好きなのに…」
「お前の場合はウザすぎる」
フルフルと震えながら地面に突っ伏す椿に対し、頭を踏み付け砂に唾を吐く佐倉はヤ〇ザさながら。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能ではあるが、性格は折り紙付きに悪い。
だが、椿はそんな佐倉が好きだと言い張り、毎朝こんなやり取りをやるのだ。
『止めれば良いのに…』と周囲の人間は心中椿を憂いていた。
当の椿は、学園始まって以来の天才児で、化学分野に関しては類を見ない才能を発揮する。
容姿も良く、人も良いのだが、天才児でありながら『馬鹿』の極みであった。
良くゆう『勉強だけできるタイプ』である。
だから、懲りもせず毎回毎回朝のラブアタックをやっているのだ。
常識人には到底理解できぬ行動である。
「まぁまぁ佐倉…今日はこれくらいにしてやれよ…」
「………半径10km近付いたら殺すからな…?」
同級生に宥められ、毒を吐きながら佐倉は渋々校舎に入るのであった。
しかし、半径10kmは無茶である。
校舎にすら入れない。
流石女王様、無茶な発言は当たり前。
「分かったよ佐倉さんっ!!!」
いや、馬鹿かアンタは…。
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