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この男を前にして、そろそろ30分が経つ。往復の移動を含めれば一時間近いのだ。
これだけの時間があれば、明日の会議用レジュメがまとめられただろうに!
気の迷いでこんなところに足を運び、あまつさえポジティブな言葉のひとつももらえるかもしれないと微かに期待した、自分が情けない。
「じゃあ私みたいな悩みを抱える客に、占い師ができることはないって訳ですね! なら、もう失礼して」
「占い師ができること。ふん……」
男は組んだままだった指を解いた。
おもむろに背筋を伸ばし、妙なシルエットの上着の襟をピッと立て直して、すっと半眼になる。
「なら、君にはこれ」
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