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奇妙な笑みを浮かべた男は、詰め寄るササカワをかわすように滑らかに半身をひねった。
背後に置かれた小さな箱からすらりと鉛筆を取り出し、名刺のようなカードに何やら書き込む。
立ち上がったままのササカワの前に、ご丁寧に封までされたオフホワイトの小さな封筒が、ついと差し出された。
「これ、明日の占いだから明日の朝開けてね。まぁ、カッチリ言えば今夜0時過ぎたら見ていいんだけど……君の性格からいって、見ない方がいいんじゃないかなぁ。あ、いる? これ」
呑気な声とひらひらする封筒の奥から、捻じり込むような占い師の視線がササカワの目を射る。
「あ、い、いただきます」
ササカワが、反射的に名刺交換のように両手で受け取ると、男は黒い瞳を反らさぬまますっと半身をのりだした。
封筒とササカワの間に割り込むように、斜に顔を寄せて囁く。
「君が幸せになれるといいな」
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