<1> 寝ても覚めても

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「あ、はあ、ありがとう……ございます」  妙に気圧されしてササカワは目を反らし、再びガタガタする椅子にストンと腰を下ろした。  占い師の瞳と、邪気があるようでないようでやっぱりあるような笑顔が、瞼に貼りついた。  なんだか煙に巻かれたようだ。  ほどなくして、ササカワは足元に置いていたビジネスバッグから財布を出し、安くも高くも感じない額の紙幣を机に置いて席を立った。  雑居ビルの谷間に挟まるような占い師の仕事場から表通りへと出ると、蒸し暑い空気が半液体のように溜まっている。  狭い暗がりと同化した黒い袖から、男の手が布きれのようにひらひらと振られている。  それを一度振り返り、ササカワは駅向こうのビル街へと急いだ。  今から戻ればまだ9時半。  2時間以上、仕事ができる。  明日の会議資料ぐらいは、何とかできそうだ。
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