<2> 占われた一日・午前

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 シシトウのてんぷら!  ササカワは、呆れた。  何かを期待していたとは絶対に認めたくなかったが、思わず脱力した。  シシトウのてんぷら!  一人暮らしも7年が経つが、家でてんぷらを揚げたことなど幾度もない。  その自分が、シシトウのてんぷらを今日中に食べれば、何かいいことでもあるのだろうか?  トースターからぷんと芳ばしい匂いが流れてくる……いや、芳ばしいというには苦すぎる匂いだ。  しまった!焦がした!  何がラッキーアイテムだ、朝から損をしたじゃないか!  眼前に、昨晩の占い師の半眼の笑いがちらつく。  焼けすぎたパンに負けず苦い顔をして、ササカワはバターをいつもより多めに塗り、新聞を読み始めた。  シシトウのてんぷらか……そういえばオフィスのすぐ向かいにてんぷら屋があるな。  あそこの天丼ランチ、シシトウ乗ってたよなぁ……。
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