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「寝ても覚めてもって、言ったよねぇ。ホントにホントに、そんなに仕事のこと考えてるの? 実はオヒレがついてた、とかさ……正直に言うなら、今のうちだよ?」
いやにさばさばと、男は言い放った。
机の上で重ねた両手に顎を乗せ、上目でササカワを見る。
何が今のうち、だ。聞きたいのはこっちだ。
ホントにホントに、あんたは占い師か。占い師ってのは、客の悩み自体を疑うものなのか。
「まぁとりあえず、昨日の話を聞かせてよ。朝から晩までのこと、かいつまんで頼むね」
「はぁ……ええと、まず朝起きてテレビのニュースをつけて、新聞を流し読みしながらパンを食べ……」
男は言うだけ言っておいて、カクッと顔を伏せた。
真上からネオンに照らされて、他人の頭頂と猫背を見下ろしながら話す、というのはどうにも落ち着かない。
そもそもこの男、こんな姿勢で、人の話をちゃんと聞いているのだろうか?
ササカワは、ピンと伸ばしていた背筋からさりげなく力を抜いた。
自分だけ人前だと気を張っているのが、アホらしくなったのだ。
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