20人が本棚に入れています
本棚に追加
ササカワは視線を占い師の頭上にさまよわせ、話を続けた。
「あ、新聞なんか『次の企画の裏付けになるか』とか、『今日の営業の話題作りに使えるかも』とかいちいち気が散って、頭に入りませんが。テレビが占いコーナーになったら消して、着替えて家を出て……」
「占いは見ないのかぁ」
「見ませんよ! 仕事の役に立ちませんから」
こういう時だけぱっと顔を上げて悲しげに口を挟む男に、ササカワは忍耐心を試されているような気がしてきた。
「家を出たら、手帳で一日のスケジュールを確認しながら駅に向かい、電車に乗った頃にはto-doリストに今日の仕事の案件を書き込んでますね。会社に着いてパソコンを立ち上げたら、まず未読メールが40とか50件……」
「へぇ! 僕なんか一ヶ月あってもそんなに来ないなぁ!」
……もう、この胡散臭い男が聞いていようが聞いていまいが気にするものか。
最初のコメントを投稿しよう!