<1> 寝ても覚めても

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 ササカワは視線を占い師の頭上にさまよわせ、話を続けた。 「あ、新聞なんか『次の企画の裏付けになるか』とか、『今日の営業の話題作りに使えるかも』とかいちいち気が散って、頭に入りませんが。テレビが占いコーナーになったら消して、着替えて家を出て……」 「占いは見ないのかぁ」 「見ませんよ! 仕事の役に立ちませんから」  こういう時だけぱっと顔を上げて悲しげに口を挟む男に、ササカワは忍耐心を試されているような気がしてきた。 「家を出たら、手帳で一日のスケジュールを確認しながら駅に向かい、電車に乗った頃にはto-doリストに今日の仕事の案件を書き込んでますね。会社に着いてパソコンを立ち上げたら、まず未読メールが40とか50件……」 「へぇ! 僕なんか一ヶ月あってもそんなに来ないなぁ!」  ……もう、この胡散臭い男が聞いていようが聞いていまいが気にするものか。
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