27人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の舞い散る、春の校門前。教師に成り立ての頃はがらにもなく緊張したものだ。
鞄からメモを取り出して、職員室へと向かう。生徒玄関前には、新入生と在校生が張り出されたクラス名簿を見るためにごった返している。この様子を見てると、自分が学生だった頃をよく思い出す。
新しい制服。新しい友達。新しい学校。何もかもに馴染めなくて、クラスから浮いていたのはまだ記憶に新しいくらいだ。
***
「あの~……」
響
「ん?」
声に振り返ると、眼鏡をかけた教師らしき女性が立っていた。
さわ子
「音乃 響先生……ですよね。初めまして。私、さわ子っていいます。校長から今日からと聞いていたので……」
響
「ご丁寧にありがとうございます。よかったぁ……危うく迷う所でした」
さわ子
「あははは……新入生の子たちもそう言ってよく迷子になる生徒が多いんですよ」
かわいらしく笑うさわ子先生。見かけ通りの優しそうな人だ。
さわ子
「では早速校舎内の案内を………と、行きたいんですが、これから部活の朝練があるんです。もしよかったら……」
響
「かまいませんよ。生徒たちと触れ合ういい機会ですし」
唯
「おっはー❗」
ガチャッとドアを開けて、明るく挨拶して部室に入る。
律
「おっす唯~。ねぇねぇ、さわちゃん見なかった?」
唯
「見てないけど……まだ来てないの?」
澪
「そうなんだ……まったく、どこほっつき歩いてるんだか」
半ば呆れぎみで準備をしながら言う澪ちゃん。朝練の時はいつもこんな調子でさわちゃん先生は遅れてきていつの間にかひょっこりいる神出鬼没な人なんだ。
紬
「……練習、始めちゃおっか」
唯
「そだね」
さわ子
「あっちゃぁ……ついつい遠回りしちゃったなぁ」
廊下を教師が走る訳にはいかない。なので歩くペースを速めながら部室へと向かう。部室へ行くがてら案内をしてもらっていたため、流れ的に逆の方向へ行ってしまいこんな状況になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!