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始業式終わりの放課後。音楽室に半ば強制的に連れてこられた。
響
「先生、失礼ですが俺にはまだやることが………」
ガチャ。
ドアが開けられ、五人の女子生徒が室内に入ってくる。今日は始業式のみだから授業はない。ということは………
なんとなく、イヤな予感がしていた。
唯
「おりょ?さわちゃん先生いたんだ」
さわ子
「あら、ちょうどいいタイミングね。こちらは……って、言わなくてもわかるわね」
澪
「音乃先生……でしたよね。はじめまして。秋山 澪です」
黒髪の綺麗な女子生徒がぺこりと挨拶する。それにならうように他の四人が挨拶する。
さわ子
「音乃先生には、今日から軽音楽部の副顧問になってもらいます」
響
「や、山中先生!?」
イヤな予感、的中。
澪
「と、こんな感じです」
拒否しきれず、結局ずるずると副顧問を受託してしまったことをなんとなく後悔している内にも、彼女らの演奏は終わった。
響
「……ドラム」
律
「はいっ」
響
「はしり過ぎだ。それからギター二人」
「はい」
響
「片方はいいとして……もう一方はブレすぎ。キーボードはもう少し前に出ろ。それから……」
澪
「は、はい……」
響
「……ベースの秋山。君、性格引っ込み思案か恥ずかしがり屋って言われてるでしょ?」
律
「おお、ズバリ!」
予想的中。楽器を演奏する人間はよく性格が出るというが、彼女の場合は典型的なパターンだ。
響
「……こんなでよく今までやってこれましたね」
さわ子
「えぇ、まぁ……」
専門的な観点からすれば、これほど強烈に個性が出てると合わせるには一苦労するものだ。それを完璧にやってのけるなどほぼ無理な話。
ある意味、すごい。
響
「……こりゃ、鍛えがいがありそうだ」
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