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唯
「お~……」
もっとも、一人を除いてだが。キラキラした目でポスターを見つめる平沢 唯。この少女には緊張感というものがどうやらないらしい。
響
「そういう訳で、明日からの連休期間内にきみ達のパワーアップをはかるべく合宿をする」
唯
「合宿!?」
響
「言っておくが海や山じゃないからな」
案の定、がっくりと肩を落とす平沢。遊ぶ気満々だったのが火をみるより明らかだ。
澪
「じゃあどこなんです?」
響
「それは………」
響
「ここだ」
律
「ここだって、人ン家じゃん」
響
「まぁそう言うな。一応設備なんかはそれなりにあるから、不便はないぞ?」
とりあえず、家の中へとはいる。後ろの五人はおっかなびっくりでおどおどしがちだが、匂ってきたかぐわしい香りに腹の虫を鳴らす。
響
「そういえば、もう昼だったな。まずは腹ごしらえからだ」
靴を脱いで、リビングへと入る。そこにはまるで来るのがわかっていたかのようにカレーの盛られた皿が人数分用意されていた。
「あ、お帰りなさい」
そして、奥から出てきたエプロン姿の人物に度肝を抜かれる。鳩が豆鉄砲くらったような顔を見るは随分と久しぶりな気がする。
「「先生が二人いる!?」」
響
「彼女は妹の奏(かなで)だ。見ての通り、双子さ」
奏
「あなた達が軽音楽部の子ね。音乃 奏です。よろしくね」
一同、未だに硬直。ポカーンとした表情は学生時代によく見た光景だ。
紬
「い、妹ってことは、ここは先生の?」
響
「ああ。といっても、今は一人暮らしだからそこら辺は安心していいぞ」
唯
「そこら辺って?」
梓
「教師が、しかも男性教師が合宿場でもないところで女子生徒と一緒に寝泊まりしていたら問題になりますからですよ」
「あ~」と、感嘆の声をあげる平沢と田井中の二人。まさか本当に気づいてなかったのか?
響
「昼食を食べたらすぐに練習に入るから、ちゃんと準備しておくように」
「「は~い」」
かくして、合宿の始まりである。
つづく
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