第一章

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              《市村》の表札の横を通り、玄関を開け、軽く溜め息をつきながらリビングに入ると台所から大きな声がかかってきた。 「あ~!朔お帰り!母さん今から夜勤だから!ご飯テーブルの上にあるからね!あとは~え~と、あ!明日の大会頑張るんだよ!? 鍵は確り閉めなさい!じゃあ行ってきます!!」 けたたましくそう並べるとカバンを持って嵐の様に去っていった。 りょ―かい‥ と言いながらテーブルの上にあったトマトを1つつまんで和室へと向かう。                       灯りをつけ、仏壇の前に座る。 視線の先には最愛の祖父、市村信之助の写真。 何を言うでもなく、写真の中の祖父は朔に微笑んでいる。 それと同じ様に朔も微笑み、心の中で語りかけた。
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