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たんぽぽ畑の中にいた沙那は、幸せそうな表情。 「キレイ……」 たんぽぽを1つ摘み取り、髪飾りみたいにつけている。 俺はずっと沙那を見つめていた。 すると流石に怪しまれたみたいで、 「……何ですか?」 沙那は不安そうに声をかけてきた。 「あっ、すいませんジロジロ見ちゃって」 沙那に気付かれて、俺は顔が赤くなった。 「あの…… あなたも、たんぽぽ畑好きなんですか?」 「へっ?」 突然の質問に俺は驚いた。 「だって、この前行ってみた時もあなたが居たから……」 あ、この人前にも来てたんだ…… 俺はその時に気付いてなかったからびっくりした。 沙那は、俺に近付いてきて、たんぽぽの髪飾り……つまり、沙那とお揃いの髪飾りを渡した。 「私、この近くで花屋をやっているんです。 もしかしたらまた会う機会があるかもしれないのでこれを……」 「えっ、いいんすか?」 「はい、お近づきのしるしに」 沙那は笑顔で言った。 「どうも……ありがとうございます」 俺は小さくお礼を言った。 それがきっかけで、俺はちょくちょく花屋に行く事にした。 別に花が買いたい訳じゃなかったけど。 店員をしていた沙那は、俺が店に入ると嬉しそうに駆け寄ってくる。 俺はその穏やかな時間が大好きだった。 俺はこの時、沙那との出会いが恋に発展するなんて思いもしなかった……
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