祟り人

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男の手が触れられた箇所の皮膚が、赤黒く変色していた。痛みは全く感じないが、異様な色合いだ。まるで、大火傷で皮膚が半分炭になったみたいだ。 しかし、俺は別に気にしなかった。痛みも感じないし、見せなければ誰も変だとは思わないだろう。それに今は丁度冬で手袋しても違和感は無いぜ。 その日、俺は手袋をしてコンビニのバイトをした。新人から可笑しいって言われても、絶対に外さなかった。店長から心配されたが、それでも外さなかった。 10日後… 俺は弁当を棚に置いていた時の事でした。相変わらず手はそのまま。原因なんてどうでも良いと思った矢先だった。 「祟り人は危険ですよ。すぐにお祓いした方が身のためですよ」 「!?」 3日前に入った女子高生のバイトの新人が言った。祟り人?何それ、食えるのか?最近の女子高生って意味わからねーって心で呟いたが、彼女の次の一言で俺は一気に絶望に変わった。 「祟り人は負を一身に背負った神様です。人間が嘘付いたり罪を犯すと、祟り人はそれを全て身体に蓄積します。だから、身体は泥人形っぽいとか。もし会っただけでしたらお祓いすれば十分。しかし…」 「しかし?」 「彼がもし接触を図ったら、それは世代交代の合図らしいです。触れた相手にじわじわと乗り移り、10日過ぎると一気に乗っ取る。自我が崩壊した頃には祟り人になるとか。って先輩?」 俺は急いでトイレに駆け込み、手袋を外してみた。すると今まで変化の無かったのに、今は腕まで真っ黒に染まっていた。触れるとヌメヌメし、しかも異臭が漂っていた。 さっきのバイトの子が正しければ、俺は死んだの同然だ。次第に不安が募り、自暴自棄になってしまった。裏手にあったカッターを握り締め、店内に入って客を形振り構わず切りつけた。店長やバイトが止めようが、俺は自分が消えるのが怖くて嫌だった。 ってか、消えるなら俺の意志やちゃんとした理由で消えたい!! 「あ゛ぁぁぁー!!」 気がついたら、カッターを胸に突き刺していた。意識が遠のく中、あのバイトの子が俺の前に来て囁いた。 「言い忘れたが、祟り人になる引き金は殺人や自殺。しなければ自然と祟り人は後退し、老衰になるまで生きれたのに…」 祟り人に会ったなら、決して触れるな。そして何もするな。一番惨い死に方をするぞ… 完
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