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「またおいで」
私の耳元でそう囁き、彼は手の平で私の目を閉じた。
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目を開けると彼の姿は何処にもなく、辺りには相変わらずびゅうびゅうと生温い風。
あれ、は何だったのだろう。本当に狐に化かされたのかもしれない。
中禅寺の熱いものとは異なる、あの、冷たい口付け。
私は今更に熱を帯びてきた口元に無意識に手をあて、一人あかくなった。
またおいで。狐は確かにそう言った。
私はまた此処に来るかもしれない。
否、きっと来るのだろう。だって狐に化かされているのだから…。
終わり
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