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「きょ、きょうごく、ど…」
言葉が思うように紡げない。そんな私に彼は笑った。
「そう。あれが君の事をひた隠しにするから…」
笑うと途端に纏う空気が優しくなる。
「私は君が気になって仕方がなかった」
何時の間にか目の前に立っていた。
細められた細い切れ長の目。それが私を捉えて離さない。
「…あ、あなた、は…」
頭がぼおとする。
心臓は壊れそうな程に鼓動を早めている。
夢か現つか、私にはもう判らない。
「私は」
笑みの形が深くなり、その端正な顔がゆっくりと私に近づく。
「狐だ」
顎を片手で掴まれ、吐息が唇にかかる。
「…き、つね…」
幼子の様に只、同じ言葉を繰り返す。
ね、と口にした瞬間に、冷たい感触が口を塞いだ。
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