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ガタリゴトリと。
玄関先で物音がするものだから、泥棒か何かだと思って足を運んでみれば、草履を脱がんとする晋助の姿。
ちょいと酒を買いになんて言って、ふらり家を出て行ったのは一昨日の晩だったかしらね。
「たかが酒一つ買うのに何日かかってるんだい」
「いや。帰り際に幕吏の連中に見つかってなァ、逃げてたんだよ」
そう怒るな、なんて言いながら晋助は私の頭をぽんぽん撫でた。
近づいた体、そのはだけた胸元に目を奪われる。
擦れ違い様、微かに鼻をくすぐったのは二日間逃げ回っていた為であろうか濃密な汗の匂い。
その芳醇な香が、ふと、情交の淫猥たる香を思い出させた。
微かに疼く下半身。
ここ数日ご無沙汰だったとはいえ何を考えているんだと、溜息つきたい気持ちを押さえて廊下を歩く晋助の後ろ姿を眺め見る。
細いくせに力強く私を掻き抱く腕、煙管を持つのは長い指、歩く都度ゆらゆらと揺れる女みたいな柳腰。
幾夜ともなく私を乱してきた男の躯。
まじまじと眺めているだけで、心なしか息まで熱くなってきてしまうようだ。
「なぁ、」
不意にかけられた声。
晋助は私に背を向けたまま、言葉を続けた。
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