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「視姦って知ってるか?」
あれま、いやだ。
もう気付いちまったのかい、全くあんたは抜け目がない人。
「そうだ、てめぇが今してる事だな」
気付かれたのが何だか可笑しくなって口元を緩ませれば、そんな私の様相を返り見た晋助もククと喉を慣らし笑っていた。
こちらに振り返り立ち止まった晋助の元へ歩み寄ると、近付いたそばから腕で頭を抱えられ髪を撫でられる。
腕の力に促され、されるがままに晋介の首筋へと埋められた私の鼻先。
その、いっそう濃く香る男の匂いに酔い痴れるのも悪くない。
「少しは否定でもしたらどうだ。俺を肴にするなんざ良い度胸だな、そんなに犯されたいか」
犯されたいかだなんて。
恋人に吐くには何とも滑稽な台詞だというのに、わざわざ耳元で囁くのだから意地が悪い。
ええ、どうぞいくらでも。
煮るなり焼くなり、
貴方のお好きになさいな。
「ふふ…それじゃあ和合和姦の成立だわ」
頭を上げてそう答えれば、目の前に迫る私の大好きな妖しい笑み。
当然の如く視線と視線は交わり、私の頭を撫でていた晋助の手に少しばかりの力が加わる。
そうして引き寄せられて、触れた鼻先。近過ぎる視線に目を閉じれば、ほんの一瞬重なる唇。
「変な女だな、てめぇは」
「そりゃあ貴方の女だもの。変わり者でもないと勤まらないじゃない」
照れ隠しなのか純粋に幸せなんてものを感じているのか。
私を見下ろす細められた一つ目は、とても穏やかな光に満ちていた。
視強は立派な性行為
【end】
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