6812人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉に観念したかのように、小さく声を発する俊哉。
「ああ」
しかし、その返事は本心ではなかった。
隙を伺っていたのである。
亮は俊哉を鉄柵に押し付け、後ろから肩を組、もう片方の手で包丁を押し当てていた。
「一つ。お前に聞きたい事がある」
隙を作らせる為に、話しをし始める。
「なんだ?」
俊哉の思惑も知らずに話しを聞く亮。
「さっき俺は質問をしたが、お前は答えてねぇ事がある」
少しの間を置き、首を傾ける。
「なんだよ?」
俊哉は目を細め亮を睨み付けると、ちらりと腹に押し当てられている物を凝視しする。
「なんで、こんな手の込んだ事をした? 俺に精神的ダメージを与えたかったのは分かるが、何故お前は自分の存在を、俺に知らせようとした?」
最初のコメントを投稿しよう!