6812人が本棚に入れています
本棚に追加
亮は遠くを見つめる。
何か答える事に躊躇うようでもあった。
そして、その瞬間が生まれた。
俊哉は一瞬の隙を突き、亮の包丁を持つ手を、こぶしで思い切り叩き付ける。
カラン
手から落ち金属音が鳴り響く中、今度は身を屈め、肘で亮の腹を突く。
「うっ」
それが上手く決まり、嗚咽をこぼす。
間髪入れずに、包丁を取りに行こうとした時だった。
その場で踏み留まっていた亮は、後ろから俊哉の足を払う。
バランスを崩し倒れ込んでしまった。
すると、包丁を余裕な顔で拾い上げる亮がこちらを見てほくそ笑む。
「ばーか! 誰だと思ってんだよ? でも、惜しかったな」
次の瞬間。
包丁を高く振りあげる亮。
もう駄目だと、両目を固く閉じ歯を食いしばる。
シュッ
最初のコメントを投稿しよう!