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「俊哉?」
美佐子の声で我に返る。
いつの間にか、涙ぐんでいた事に気付き、天井を仰ぐ。
「それ……」
美佐子が指差すものは、俊哉の手に握られた、白い携帯であった。
あれから、亮の両親に掛け合い、形見として貰ったものだった。
勿論、すでに契約は切られている。
「気付いたか? あいつに……お前の姿見せてやりたくてな」
更に、強く握りしめる。
生きていればきっと、俊哉を茶化しながらも、喜んでくれていたに違いなかった。
「亮君……あたしを眠らせる時にね、意識が朦朧としている中でこう言ってたよ」
純白のウェディングドレスに身を包み、窓から差し込む光りが美佐子を輝かせる。
そして、目を細め春の木漏れ日のような微笑みを浮かべ口を開く。
「幸せにな……って……」
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