いつか、再び

9/11
6811人が本棚に入れています
本棚に追加
/213ページ
「俊哉?」 美佐子の声で我に返る。 いつの間にか、涙ぐんでいた事に気付き、天井を仰ぐ。 「それ……」 美佐子が指差すものは、俊哉の手に握られた、白い携帯であった。 あれから、亮の両親に掛け合い、形見として貰ったものだった。 勿論、すでに契約は切られている。 「気付いたか? あいつに……お前の姿見せてやりたくてな」 更に、強く握りしめる。 生きていればきっと、俊哉を茶化しながらも、喜んでくれていたに違いなかった。 「亮君……あたしを眠らせる時にね、意識が朦朧としている中でこう言ってたよ」 純白のウェディングドレスに身を包み、窓から差し込む光りが美佐子を輝かせる。 そして、目を細め春の木漏れ日のような微笑みを浮かべ口を開く。 「幸せにな……って……」
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!