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「亮……」
涙が溢れる。
あの時、泣き明かした筈だった。
それでもそれは尽きる事なく、温かな雫は後から流れ出す。
コンコン
扉を叩かれ、俊哉は俯き涙を拭う。
『失礼します。そろそろお時間となります』
外から、係の人からの声がかかる。
「あっはい」
代わりに返事をする美佐子。
「……俊哉? 大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込み、声をかける。
「あぁ……行かなきゃな」
いまだ涙目の俊哉であったが、美佐子の声に頷き、笑みを浮かべる。
プルルル
突然、俊哉から携帯の音が室内に鳴り響く。
「あっ、やべっ! 電源切っとくの忘れてた!」
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