6812人が本棚に入れています
本棚に追加
その日は雲一つない、満月の夜だった。
真っ白なサマードレスが、ヒラリと夜風に揺れる。
それに合わせて、長い髪がサラサラと流れていた。
こちらへ手を振る女。
はっきりと表情は見えないが、赤い口紅をつけているのが分かる。
その異様な赤色は、夜にもかかわらず辺りの電灯により、鮮明に浮き出ていた。
そして、その口元は歪む。
俊哉は身を乗り出し、ソファの前に置かれたガラステーブルに、手を付いた。
瞬間。
両手を上げ、女は屋上から飛び下りたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!