十字架

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福音の本質を知るに至ったら、福音を語り続けるしかなすすべがなくなる。 命が命の概念に到達したら、その命は永遠に生き続ける。 単に命として生きるだけなら、動物でも出来る。しかし命を知る事が出来るのは、精神を備えた人間だけである。 自由は矛盾を抱えた概念である。それは一方では何でも出来る精神状態だが、何でも出来る以上、結局、今、ここで、私が、する必然性のある事をするだけに終わる。 語るべきか、黙るべきか、迷ったら、沈黙できるなら語れ、沈黙できないなら語るな。 意識が自分を意識している状態を保つ為には、意識と自己意識とを仲介する第三者が必要である。 不安を抱えた人間を支える為の、最も確かな根拠は十字架である。
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