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しかしリリの言う事ももっとも、万が一街道を通る誰かに今の姿を見られたら言い訳はきかない。
そんな事を考えているとふと何かが頬に触れる。
レイジ
「雪………。」
さっきまで晴れ渡っていた空はいつの間にか雲に覆われしんしんと雪が降り始めていた。
何にしてもこのまま放って置けないと目の前の少女を起こそうと揺すってみたり、頬を軽くつねってみたり、声をかけたりするのだが一向に起きる気配は無く。
その間も雪は降り続けうっすらと積もっていく。
リリ
「レイジ様。」
レイジ
「ああ、分かってる。」
何かを言おうとしたリリの言葉を遮りレイジは答える。
ふう、と溜め息を1つ吐くとレイジは見知らぬ少女を背負う。
このままここに寝かせていくわけにもいかない、雪は降っているし心無い人間やモンスターに襲われないとも限らない。
何よりもレイジの性格がそれを許さない。
背負う際に体を動かすも、やはり少女が目覚める様子は無く。
レイジ
「しかたない、放っていくわけにもいかないし、連れてくぞ。」
リリ
「そうですね。
ですがわたくしには今回の事でまた何か面倒なことに巻き込まれる気がしてなりません。」
レイジ
「ははっ、まさか。
いくら何でもそうそう厄介なイベントなんて起きたりしないさ。
………多分。」
リリの指摘に若干不安を感じながら歩みを進める。
何となくさっきまで晴れていたはずの空を見上げ思う。
雪が降るような天気ではなかったはず。
まるで
背中の少女が雪を連れて来たかのようだ
が、いくらなんでもそれは無いだろうとすぐにそんな考えを払拭する。
ソロンはもう目の前だ。
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