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さりげなく男性を観察。
顔は穏やかで、被った帽子からはみ出た頭髪に白髪が混じり始めた初老の男性。
服装は、こちらはレイジの後ろで寝ている少女とは違いちゃんとした信徒なのだろう。
変に改造されたローブではなく、きちんと足下まで覆われた正式なアーティス教信徒のローブ。
まあ、ローブは普通足下まで隠すものだし、年老いた男性のミニスカ状態など間違っても拝みたくない。
そして首にかけられた十字架に羽根が生えたような形の特殊なネックレスが男性を信徒の中でもそれなりに地位のある存在、アーティス教の司祭であることを示している。
レイジ
「え~と、じゃあ何か他に?」
男性
「ええ、私は見ての通りアーティス教の司祭でして。
少し困った事がありましてね。」
レイジ
「困った事、ですか。」
男性
「そうなのです。
私が運営させていただいてる教会は孤児院も兼ねていまして。
今日、そこから一人の少女がいなくなってしまいまして。
それでこうしていろんな人に訊いて回っているしだいでして。
特徴としてはですね、ミルク色の髪に少し小柄な少女で。」
レイジ
「ああ。」
それなら後ろに………そう続けようとしたレイジの口が閉じる。
目の前の司祭に微かな違和感を感じたからだ。
具体的に言えば子供を探しているわりには焦燥感が感じら
れない。
これに関してはまあ下世話な話し、子供を育てるには金がかかる。
あまり良いこととは言えないが世の中の司祭が全て聖人であるわけではない。
子供探しにそこまで真剣になれなくてもしかたがないのかもしれない。
だが、もう1点はそんな話しではない。
レイジが知っている素振りを見せた瞬間、司祭の目が聖職者に似つかわしくない妖しい光を帯びたように見えたからだ。
それは一瞬の出来事でともすれば錯覚かもしれない、そんな僅かな瞬間ではあったのだが。
レイジ
「あ~、すいません。
ちょっと俺には心当たりは無いですねぇ。」
気付けばそう答えていた。
レイジの中の何かがこの男に後ろの少女の事を言うのはマズい。
そう告げていた。
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