再会は夢の中で

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     暗い……ここは何処なの?  辺り一面には鋭い刺を持った植物が茂り、頼れる明かりといえば聳え立つ木々の隙間から申し訳程度に漏れた真紅の月光しかない。 道らしき道もなく荒れ果てた森の中を一人の少年が歩いていた  人間ではないのかな?  大きな漆黒の翼、ガーネット色の瞳、褐色の肌、尖った耳。そのどれをとっても人間のものとは違う異形の者。 虚ろな瞳でうなだれて歩く彼の足取りは重く、大切そうに一人の少女をその腕に抱き泣いていた。  やだ、涙が……どうして?  腕に抱かれた美しい少女。 その顔に生気はなく、限りなく透明に近しい蒼白色が彼女の顔には浮かんでいる。その背にある純白の片翼は鮮血に染まり、ポタリ、ポタリと地面に赤黒い跡を残していく。 「何故だっ……どうして?俺達はただ一緒に居たいと願っていただけじゃないか……」  少年の声はとてもか細く、その悲痛な思いを乗せ夜の闇へと飲まれて消えていく。 暫く歩き続けていた少年は、森の最奥へ辿り着くと歩みを止めた。目前には吸い込まれてしまいそうな程深い漆黒の泉がある  彼は静かに片膝をついた。 「必ず、必ず見つけてみせるから……絶対に。もしもこの身が滅びたとしても、心はいつもお前と共にある」  少女の額に、頬に、そっと啄む様な口づけを落とした少年の顔はとても優しく微笑んでいるように見えた。 少年は暫くその場で愛おしげに少女を見つめていたが、何かを決意するように小さく頷き立ち上がると一歩、また一歩と歩みを進め泉へとその身を沈めた。  刹那、刺すような冷たい風が森を吹き抜け空の月がゆらりと揺れた。 だが暗い森はまるで何もなかったかの様に静寂に包まれ、そこにはもう二人の生は感じられなかった。    
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