宇宙の果てまで捕まえて

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「あの木の葉っぱが全部落ちたら、私も死んじゃうから」  悟りを開いたかのような穏やかな表情を浮かべ、物騒なことを言い出す彼女に「そんなことない、きっと良くなるって」なんて少ない語彙で必死に励ましの言葉をかける秋穂。 そんな秋穂らを横目に、このまま何事も無く春を迎えてあの木が鮮やかな緑色で満たされたら、彼女は退院どころかオリンピックに出るくらいしなければ帳尻が合わないのではなかろうか、と僕は考えていた。  千羽鶴を持って行くからついてきて、と山田秋穂に言われたのが今朝のこと。 少し前からコツコツと折り進めてきたものがようやく完成に至ったのだ、と発展途上の胸を誇らしげに張っていた。 ショートカットにやや色黒の健康的な身体、四月の体力測定において、女子で唯一五十メートルを五秒台で駆け抜けた秋穂から渡されるそれはひょっとしたら嫌味の領域に入るんじゃ?それに、そもそも僕は彼女と殆ど面識無いんだけど。  色々と思うところはあったけれど、半開きになった口から僕の言葉は紡がれない。 満面の笑みを浮かべている秋穂を目の前にして、そんなことを言う度胸は僕には無いのだ。なまじ反応が予想できてしまう幼馴染というのはそれだけでタチが悪い。 ちょっとした意地もあり、注意深く見なければ分からないほど小さく頷くと、秋穂は少しだけ照れたように笑った。
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