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五月の頃よりも髪は少しだけ伸びていて、パジャマのせいもあってか学校で見かけたときとはまた違った印象があった。
もう少し表情に富んでいれば、薄幸の美少女としてそれなりに人気を博していたかもしれない。
かくいう僕も、秋穂以外の女の子と二人きりという慣れない状況に少しだけ緊張していた。
「で、僕に話って何かな?」
探りも世間話も挟まず、率直に切り出す。お互いが黙っている空気を打破したいのとなるべく早く終わらせてさっさと帰りたいのと半々の意識が入り混じっていた。
「そんなに早く帰りたい?」
おもいっきり見透かされている。苦笑いすることしかできない。図星を指された後ろめたさも加わって、話の主導権は完全に遠野さんに握られていた。
少々の嫌味は覚悟しておくべきかもしれない。
「……まぁ良いわ。私が君と話したかったのはね、君が私に無関心だったから」
「は?」
「私の言葉を聞いて、山田さんはあんなに心配してくれた。だっていうのに、君はそしらぬ顔で私たちを見てた。馬鹿なことを言う私を嫌悪するわけでも心配するわけでもなく、君はただ黙って見てた」
「まぁ……うん」
「それが、とても興味深くて」
俯きがちでよく分からなかったが、遠野さんは小さく笑ったような気がした。
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