宇宙の果てまで捕まえて

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もうちょっとちゃんと見れないかな、と思い少しだけ首を傾げると、彼女は急にこちらに振り返りもう少しで額がくっついてしまいそうな距離まで顔を近づけてきた。 彼女の長い睫毛、綺麗に整えられた目、かろうじて微笑と呼べるほど控えめに三日月を成した小さめの唇が数cmの距離にあることに心臓が爆発するんじゃないかと思うくらいに音を立てている。 が、それ以上に怖い。 秋穂と対峙していたときの遠野恵美と違いすぎて怖いのだ。 少しだけ顔を後ろに引いて抵抗してみるが、それは何の解決にもならなかった。 「な――何?」 「私が人間じゃないって言ったら……君、どうする?」  緊張のせいでかろうじて短文による質問を返すのが精一杯の僕に、遠野恵美は確かにそう言った。 「えぇ!?」なり「何言ってんだよー!」なりリアクションができればそれが一番だったのだろうけど、この状況でそこまで要求されても困る。 実際の僕といえば「そうなんだ……」と返すのが関の山で、リアクションとしては赤点レベルの大失態だ。  しかし、遠野さんはそんな僕を蔑むでも呆れるでもなく、少し驚いた様子で見つめていた。 相変わらず距離がそのままなので、僕は何もできず彼女の次なる行動を待つだけの木偶である。 小さな声で「へえ……」だの「凄いわ」などと呟いているけれど、そんなことはどうでもいいからとりあえず離れて欲しかった。  やがて僕の願いが通じたのか遠野さんはベッドに重心を戻すと、僕の息つく時間などまったく考慮に入れずに何やら含みのある笑顔で語りだした。
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