宇宙の果てまで捕まえて

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「驚かなかった君だから正直に言うけれど、私は人間じゃないの。 ……そうね、世間一般で言う“宇宙人”っていうのが分かりやすいかな。 ここ太陽系第三惑星地球から四十八万光年先にある惑星から地球人を調査するためにやってきた。 人間に極めて近い自立型ヒューマノイドを作るためにね」  帰りたい。 「私たちの同胞は何人もこの星に来ていて、私はその中でも“病弱で薄幸な人間に対し、精神発展途上の人間がどういう感情を抱くのか”って分野での調査をしているの。 でも殆どが2パターンに分かれる。山田秋穂のように親身になり気遣いを見せる人間と、適当な善意に自己陶酔する人間。 私の調査はその比率を調べるだけで終わろうとしていた。にも関わらず、今日君が来た」  帰りたい。 「分かるよね?君は先のどちらのパターンにも当てはまらないの。 関わってしまった、知ってしまったにもかかわらず、我関せずと客観的に目の前の事実を受け入れて黙殺する。 これは今までに無かった新しいパターンの人間なのよ。だから、私は君をもっとよく知りたい。君がどう考えその結論に至ったのか、他の人間に対してもそうなのか。 それら分析に必要な情報を余すところ無く私に教えて欲しい」 「帰りたい」  ついに口に出た。でも仕方がないと思う。むしろ逃げ出さずに最後まで聞いたことを誇っても良いのではないだろうか。
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