宇宙の果てまで捕まえて

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「いいえ、帰さない。 私は君を知りたい。君を知らずして故郷には帰れない。私は私がするべきことを成さねばならないの」  藪を突いたら宇宙人が出てきた。 ベッドから扉までの距離を目測しつつ、ちょっとずつ椅子を後ろに下げるという小技を試みるも、そうはさせるかと病人とは思えない速度でガッチリと両腕を拘束され、先ほどの冷淡な眼はどこへやら、新しい玩具を与えられた子供のように爛々と輝く目で僕を見つめている。 感情も昂っているのだろう、心なしか頬も火照っているようだ。  だが待って欲しい。  百歩どころか四十八光年譲って本当だとしても帰りたいし、彼女の言葉が嘘っぱちだとしたらもっと帰りたい。 速やかにもっと大きな病院を紹介するのがクラスメイトとしての責だと思うのだ。  となると彼女を刺激しないよう、且つこの場を穏便に切り抜けられる理由を必死になって探さねばならない。 遠野さんの言うことは深く考えるまでもなく嘘っぱちなのだろうけど、どちらにせよ彼女をこれ以上刺激することで僕に得は無い。 絶無。 強いて挙げるのであれば病室を出ることが僕の勝利だ。
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