宇宙の果てまで捕まえて

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 自身の貧相な語彙に心の中で舌打ちをしつつ、僕は両手を握られたまま立ち上がった。 自然彼女を持ち上げる形になり、少々驚いた表情の彼女をまっすぐに見つめて、僕は毅然と言い放つ。 「突然のことで頭が一杯なんだ。一日考える時間が欲しい。明日も来るから、それじゃダメかな?」  嘘も方便どころか明日は名も知らぬ五人目くらいのお爺ちゃんが突然の不幸で亡くなってしまう気がビンビンなのだけれど、とりあえず問題を先送りにすることが先決。 なんなら病室を出たその足で彼女のご両親に会いに行き、洗いざらいぶちまけて僕の知らない所で幸せになってもらっても良い。  何にせよ、このままここにいること自体が危険なのだ。 客観的に見て少々物分りが良すぎたか、彼女は驚いた表情のまま動かない。ヤバイ、星間戦争勃発か?なんて考えていると、頭の中でどう処理されたのか遠野さんは僕の手を放しにっこりと笑った。 「うん、待ってるわ。それじゃ、また明日」  ここで駆け出すようでは二流である。僕はその笑顔に応えるように微笑むと、非常にゆったりとした動作で病室を後にする。 扉を閉め切る直前まで手を振ってくれた彼女を視界に収めながら。
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